慣らし保育で子供が泣く、心が折れそうなママヘ〜乗り越える方法〜
保育園に入園すると慣らし保育が始まりますが、子どもにとっては大きな環境の変化でなかなか慣れることができずに泣いてしまう日々が続くこともあります。
泣いている子どもを保育園に預けて離れることはママにとっても辛いでしょうし、子どもにも申し訳ない
気持ちで仕事に向かわなければならなくなって心が折れそうになってしまいますよね。
そこで今回はそのような大変な時期を乗り越えるための方法やコツを、保育士としての経験談も交えながら紹介していきたいと思います。
慣らし保育で子どもが泣く理由
子どもの入園が決まり、保育園通いが始まるとまず最初に出てくる悩みは「慣らし保育での過ごし方」だと思います。
慣らし保育ではほとんどの子どもが泣いてしまい、ママと離れることを嫌がってなかなか分離がうまくいかないものです。
子どもが泣いてしまうとどうしてもママとしては後ろ髪を引かれる思いになってしまい、
子どもと別れて保育園を離れるタイミングが掴みづらくて大変だという話も担任としてよく耳にします。
ではどうして子どもは泣いてしまうのでしょうか。主な原因や背景と言われるものを3点挙げて紹介します。
・急な環境の変化
大人でも生活環境や自分を取り巻く人間関係が一度に変わったら戸惑いますし、気を遣う毎日で心身ともに疲れてしまいますよね。
それは子どもも同様ですし、まだ小さく発達も未熟なためにその身体にかかる負担は大人の何倍にもなると考えられます。
子どもは新しい環境から受ける刺激やストレスに適応しようと日々頑張っているのですが、
それでもその不安に耐え切れずママが恋しくなって泣き出してしまうことが多々あります。
・人見知りもしくは場所見知り
乳児の発達上、生後6か月前後から家族とそうでない人、信頼できる人と初見の人をなんとなく見分ける能力が発達します。
家族をはじめとする関りが濃くて愛着関係が築かれている大人に対しては甘えたり、笑いかけたりしますが、
そうでない人には警戒心を強くもち時にはその緊張感から泣いてしまう姿も良く見られます。
これがいわゆる人見知りというものです。
さらに子どもによっては慣れ親しんだ場所とそうでない新しい場所に対しても同じような反応を見せる子がいて、それは場所見知りと呼ばれています。
保育園はまさに子どもにとって新しい場所であり、そこにいる大人も子どもも初めましての人ばかりなので、どこを見ても逃げ場がなく泣きが長引いてしまう要因になります。
・分離不安
これはママにとっては聞き慣れない言葉かもしれませんが、心理学や精神医学の用語で「分離不安症候群」というものがあります。
この用語は保育園でも使用されており、意味としては「愛着のある人物や場所から離れることに対して不安を感じること」を指します。
この症状が顕著に見られるのは子どもが6か月〜3歳までとされていて、病的なものではないので治療や通院の必要は全くありません。
しかし子どもが入園や転園などで慣らし保育を経験する時期と症状が見られやすい時期が重なっているために、子どもの泣きと関連付けて考え、対処していく必要があるのです。
慣らし保育を乗り越えるには分離不安の解消と愛着関係がカギ
慣らし保育を乗り越え、子どもが1日でも早く笑顔で保育園に通えるようにするためには分離不安を取り除くことと、保育士との愛着関係の形成がなによりの近道です。
分離不安に関しては慣らし保育の時期に限らず、子どものその日の体調や精神状態によってはもう何年も保育園に通っている子でも強く表れることがありますので、
完全に取り除くということは難しいです。
しかし保育士と子どもとの間に信頼や安心感が生まれ、子どもがママに向けるものと同じ様な愛着関係が築かれることで、登園時の分離不安はかなり軽減できます。
とはいえ子どもはママの姿が見えれば保育士よりもママが良いですし、保育園よりも家庭が好きなのは当然です。
そこでママも心配な気持ちや子どもと離れがたい気持ちがあるでしょうが、
ここは心を決めて登園後の準備や担任保育士とのやりとりが終わったらなるべく早く子どもの前から姿を消すことが重要なのです。
子どもにとって絶対的存在のママの姿が見えなくなり、保育園での生活や遊びに関心をもち、集中していく中でママとではなく保育士との間に関係が作られ始めてくるのです。
子どもと保育士との人間的な相性もありますが、乳児クラスは複数担任であることがほとんどですので最もその子の心に寄り添え、
子どもも一番居心地が良いと思える存在の保育士を一人でも見つけることができたら、慣らし保育を乗り越えるのにそう時間はかからないのではないかと期待が持てるようになります。
心が折れそうな時期を乗り越える方法は?
子どもが慣らし保育になかなか慣れず親としても不安でいっぱいの時はどうしても気持ちがネガティブになってしまい、
「仕事を続けるという選択は間違っていたのかな」
「子どもが小さい時くらい一緒に家庭で過ごしてあげるべきだったかな…」とママ自身も悩みがちで心が折れそうになってしまいますよね。
子どもはママの精神状態や表情をとてもよく見ており、敏感に感じ取っていますので、ママが保育園に対して不安や心配をもっていたり、
「心が折れそう…うまくやっていけるかな」とマイナスなイメージを持っていたりすれば、それは少なからず子どもにも伝染してしまいますので注意が必要です。
ここではママの心が折れそうな時期を乗り越える方法やコツを3つ紹介していきます。
・保育園での子どもの小さな成長を大切にする
子どもの適応能力は大人が思っている以上に強く、送り迎えのタイミングではママやパパの顔が見られた安心感から
いつも泣いてしまう子であっても保育時間中は案外けろっとして機嫌よく遊んでいたり、泣くことなく食事や睡眠も十分にとれている姿もよくみられます。
「昨日は泣いていたけれど今日は泣かなかった」「前まで抱っこから離れられなかったけれど、好きな遊びが見つかった」
というような一見小さいけれど子どもにとっては大きな成長の一歩が保育園では毎日みられます。
これらの小さな一歩を積み重ねることで、日に日に笑顔も増えてきて、大好きな担任保育士ができて、
仲良しなお友だちもできて…いつの間にか子どもの中で「保育園は楽しい」「保育園に行けば先生に会える」と
いうイメージに変わっていき、泣くことも減ってくるようになります。
・保育園に慣れるまでには時間がかかると覚悟する
子どもはその日の体調や機嫌によっても泣きの強さが変わったり、見せる姿は様々です。
ママが想像しているような「保育園に毎日楽しく登園していき、泣かずに過ごす」段階に子どもの精神面をもってくるためにはそれなりの時間が必要です。
もちろんすぐに慣れて笑顔が見られるというわけではありませんし、個人差もありますので「〇日で完全に慣れてきます」ということも一概には言えません。
しかしそのような状況の中でも私の経験上、間違いなく言えることは「いつかは必ず慣れて、泣き顔より笑顔の方が多くなる」ということです。
保育士もなるべく子どもの園での様子や過ごし方の変化を細かく丁寧にママに伝え、時には写真なども活用して分かりやすく理解できるようにしますので、
ママもあまり深刻になりすぎず「自分の子どもだけではなくみんな不安な中頑張っているんだ」「子どもなりにこの環境で成長していくんだ」と
前向きにとらえてみるようにしてみると保育園での子どもの見え方も変わってくるのかなと思います。
・ママと同様、立場は違えど子どもも保育士も一緒に慣らし保育を乗り越えているという意識をもつ
入園当初や慣らし保育の最中はどうしても毎日泣かれてしまうので、
「ずっとこれが続いたらどうしよう」「保育園の先生方に迷惑をかけているのでは…?」とネガティブになってしまいがちですが、
ここはグッと堪えて保育園での対応と子どもの成長を信じてどんと構えてみるのがコツです。
また保育園で頑張っている子どものことはたくさん褒めてあげて、家ではなるべくゆったり、甘えて過ごさせてあげましょう。
子どもの甘えや思いを全力で受け止め、癒してあげられるのはママの特権です。
慣らし保育中は特に保育士と連携を密にとりながら子どもが無理なく過ごせることを第一に考え、みんなで一緒にこの難関を乗り越えていくというイメージをもってみましょう。
「ママと同じ様に、もしくはそれ以上に子どもは保育園で頑張っている」「何かあれば保育士に気兼ねなく相談して子育ての負担や悩みを共有できる」
という思いを持てば、ママの気持ちも楽になって緊張もほぐれてきて良いでしょう。
子どもと関係を築くための保育士の配慮について
子どもが泣いてしまったり、ママから離れなくなったりしてしまうと保育士としても半ば強引にママから子どもを引き取ってママを見送る形になります。
まだ保育士と子どもとの間にも十分な関係性が成り立っていないために受け入れ後も長時間にわたって号泣されてしまうと、
どうしても「子どもにひどいことをしている」ような感覚になってしまい、いたたまれない気持ちになるのも事実です。
そこで入園直後の慣らし保育で泣いてしまっている子どもに対して担任保育士がどのようにアプローチをし、
関係を築いていくのかについて保育士としての私なりのコツを3つ説明していきたいと思います。
・泣いている子どもが落ち着ける場所やおもちゃを見つける
分離不安や環境の変化などでママと離れてからしばらく泣き続けてしまっている子でも、
窓際や部屋の角の静かなところというように何処かしら落ち着ける場所や子どもなりの立ち位置などが経験場必ずあります。
これは場所だけに限らず、絵本やブロック、音の出るボールなど保育室にあるおもちゃの中にも集中して遊べるものや、
手に持っていると落ち着くものが子どもによって種類は違えど必ずひとつはあるものです。
そこで保育士は子どもに声をかけながら保育室の周りを歩き回ったり、様々なおもちゃを見せて一緒に遊んだりして、
少しでも泣き止んだり、集中してじっと見たりしている姿を見逃さないようにして、
子どもが慣れない中でも少しでも泣かずに自分の好きなことをして過ごせる時間と空間を見つけ出すことに力を尽くします。
・子どもとは適度な距離を保ってかかわる
子どもが人見知りをしている場合には、保育士の顔を見たり、抱っこされたりすること自体が嫌で泣いている事も多いです。
そこで保育士の一方的な「早く関係を築きたい」という思いだけで嫌がっているのに抱っこをしたり、常に子どもの目の前で声をかけ続けたりすることは子どもにとっては
かえってストレスやトラウマになって記憶に残ってしまい、本来のねらいである「子どもがなるべく早く安心して保育園で過ごせるようにする」ことに対して逆効果となります。
子どもが一人で集中して遊んでいる時には少し離れてその様子を見守って、うまく出来たことがあれば一緒に喜び、
援助が必要であれば優しく声をかけながらさりげなくサポートする程度の距離感をはじめのうちは特に大切にして、
子どもの気持ちや保育士に対する思いの変化を長い目でみていくようにしていました。
・子どもが満足いくまで抱っこや遊びを続ける
子どもは同じ遊びをくり返しやって楽しませてくれたり、自分の欲求をとことん受け止めてくれたりする大人に対して信頼関係を築きやすいです。
なので人見知りをしておらず、特定の保育士の抱っこに慣れて着たり遊びを一緒に楽しめるようになってきたりしたタイミングは見逃さないようにして、
保育士同士で連携をとりながら子ども一人ひとりにとことん付き合うようにしています。
これらの点を大切にして慣らし保育中はいつも以上に慎重に子どもとかかわって、
互いに理解を深めていくことで、少しずつ関係を築けていけたら良いなと思いながら保育士側も奮闘しています。
ですので子どもを預ける時に保育士の方へ行くことを嫌がって泣いてしまっていても、
担任保育士の子どもへのかかわりや技術を信じて安心して預けていただけたらと思います。
神経質になりすぎず長い目で見守って
慣らし保育は大人も子どもも慣れないことばかりで何かといっぱいいっぱいになってしまいがちです。
ママはそんな中で泣き叫ぶ子どもを後にして仕事に向かわなければならず、
子どもに毎朝泣いてすがりつかれてしまうと精神的にもとても大変だということはとてもよく分かります。
しかしそこで神経質になりすぎて過度に心配しすぎたり、子どもの姿をネガティブに捉えたりすることはママ自身にも子どもにも悪影響です。
「今は泣いているけれどいつかは慣れるはず」「新しい園生活に葛藤しているのは自分だけではない」という考え方を大切にして、
子どもの成長を信じて待ってあげるようにしてみてくださいね。