保育園でのトイレトレーニングのやり方やコツを保育士が答えます!
お子さんが保育園に入ると、保育園では他のお友だちとの集団生活になるので、食事や排泄および着替えといった基本的な生活習慣がどんどんお子さんの身についてきますよね。
基本的生活習慣の中でも、特に援助や後片付けに手間も時間もかかるもの、そして簡単には進められず悩んだり、親としてしつけの壁にぶつかってしまったりすることが多いのがトイレトレーニングです。
トイレトレーニングが大変な主な理由は、トイレの仕方は男女でも異なる上に、トレーニングを始める子どもの年齢や意思によっても進め方が違ってくるからです。
また、他の子と比べて進度が遅いと感じたり親として焦ってしまったりすることも多いのが現状です。
今回は保育士として勤務している私の経験から、実際に保育園で行なっていたトレーニングの内容やスムーズに進めるコツなどを紹介していきたいと思います。
トイレトレーニングとは何をするもの?
トイレトレーニングとはその名の通り一人でしかるべきタイミングにトイレに行き、排泄できるようになるまでの自立へ向けたトレーニングのことを指します。
簡単に言うとオムツやおもらしからの卒業までのステップなのです。
トイレトレーニングを進める中で子供に期待する育ちとしてあげられるのは、一つ目は尿意を自覚して限界が来る前に保育士に伝えて、自分でトイレに行けるようになることです。
二つ目は衣服の着脱やトイレでの排泄、洗浄、手洗いといった一連の流れを自分でできるようになることです。
しつけの中には食事の作法や言葉遣いなど、説明しながら大人が手本を見せることで子供が習得していくものも多いですが、
このトイレトレーニングだけは尿意を事前に自分で察知するというようなお子さん本人の感覚やトイレに行きたいという意思が何より大切になってくるために
なかなか大人のタイミングだけではスムーズに進まないのが難点です。
保育園でのトイレトレーニングの方法や進め方について
保育園でのトイレトレーニングは、トレーニングの対象が何歳児のクラスであるかによって方法や進め方に差があります。
私が勤務していた保育園では、基本的に3歳児クラスに進級するまでにトイレトレーニングを完了させ、オムツから卒業できていることを一つの目標としていました。
つまり1歳児クラスと2歳児クラスでトイレトレーニングに力を入れており、それぞれの子供の育ちにあった進め方をしていましたので年齢ごとに分けて説明していこうと思います。
1歳児クラス
1歳児クラスとはいえ、0歳児クラスから進級したばかりで月齢によって体の成長や心身の機能の発達に大きな差があるクラスです。
もちろんほとんどの子がオムツなので、トイレトレーニングは子どもたちがクラスに慣れて保育士との信頼関係もできて集団の中でも落ち着けるようになる秋頃を目安にスタートします。
まずはトイレという空間に子どもたちの興味を持たせることから始まります。
今までは保育室の一角やベビーベッドがオムツ交換の場所だったところを、子ども用のトイレまで行ってオムツを交換するように徐々に変えていきます。
ここはどこだろう?と不安そうに周りを見渡す子もいれば、逆にどんどん興味を持ってトイレ周りを探検してレバーを引いて水を流す子もいます。
毎日のオムツ交換をトイレですることで、この場所は怖いところではないこと、そして排泄をするところであるという認識をまずは子どもたちに持ってもらうことが大切なのです。
そして少しずつですが月齢の高い大きな子から順番に、怖がるようでなければ様子を見て便座に座らせてあげます。
子どもが座った時に排泄した、しないは関係なく、あくまでトイレの使い方や座り方に慣れてもらうのがねらいです。
中にはもしかしたらちょうどトイレに座ったタイミングで予期せず排泄する子もいるかもしれません。
その時は大げさなくらい保育士が喜び、子どもに対しても十分褒めるようにして、排泄に対して良いイメージを持ってもらえるように配慮しています。
このような形で、毎日外遊びの前後や給食の前後、お昼寝から起きたタイミングなど1日の中で何度か決まった時間帯にトイレに行く習慣を何ヶ月もかけてつけていきます。
1歳児ですので、最初のうちは遊び感覚でもいいからとにかく定期的にトイレに連れて行ってその場に慣れてもらうことを大切にして進めていきます。
2歳児クラス〜
2歳児クラスでは、1歳児クラスからトイレに慣れてきていること、そして子どもたち自身も成長して保育士の声かけに応じて自分で動くこともできるようになってきている姿があります。
ここから本格的なトイレトレーニングを始めていきます。
まずは1歳児クラスから引き続き日中の活動の合間など数時間おきにトイレに行く習慣をつけ、少しでも良いので必ず便座に座って待つように声かけをします。
私の勤務していた園ではたとえオムツにすでに出てしまっていても、習慣づけのために1人ずつ順番に座っていました。
基本的にはじめのうちは男女問わず座り便器ですが、園によっては途中から男の子は立ち便器のトレーニングを始めるところもあるようです。
しかし男の子の立ち便器はプラスアルファの応用編のようなものなので、3歳になってから徐々に教えていくところがほとんどです。
こうして子ども一人一人に個人差はあるものの、1日何度も、そして毎日トイレに座って待つことを続けると自然とトイレで排泄できた!
という成功体験が子どもたちのなかに積み重なっていきます。
子どもも
「トイレで排泄すると先生が喜んでくれる」
「なんだか自分もオムツが濡れるより快適」
「トイレで排泄するなんて上のクラスのお兄さんお姉さんみたいでカッコイイ」
という経験を積み重ねることで、また今日もトイレで排泄しよう!と積極的にトイレに向かう姿も見られるようになります。
トイレで成功することが増える同時に、子どもたちは自分の排泄のタイミングも自覚できるようになってきます。
毎日のトレーニングの中で、トイレに行くたびに成功するな…というような子は、さらに先のステップとなる普通のパンツよりも厚手素材で給水機能のあるトレーニングパンツへと進みます。
そのあと小児用の普通のパンツへと完全移行します。
オムツからトレーニングパンツになると、おもらしして濡れてしまった時の不快感がより大きくなるため、子どもなりに不快な状態から逃れるためにも「漏れてしまう前にトイレに行かなくちゃ!」という気持ちが強くなり、排泄面での自立が進みます。
こうしてトイレトレーニングは段階的に子どもの発達に合わせて進められます。
トイレトレーニングで保育士が教えるコツなどについて
トイレトレーニングにおいて子どもが積極的にトイレに行ったり、排泄したことを保育士に伝えたりするようになるには保育士の子どもへの声かけや配慮がとても重要になります。
例えば子どもをトイレに誘い掛けたい場合には、ただ「トイレに行くよ」という声かけではなく、
「一緒に行ってみようよ。よーいどん!」「(仲良しの)〇〇ちゃんも行くって」
というようにただ機械的に誘うのではなく、トイレに行くことが楽しいことになるように工夫しています。
それでも遊びに夢中でトイレに行く気分ではなかったり、トイレに行くこと自体に慣れずに嫌がり泣いたりする子ももちろんいます。
そういう場合には無理強いせずにその子のペースに合わせて少し時間をあけてまた声をかけます。
トイレに行った際にも子どもが便座に座るときに怖くないように支えたり、そばについて歌を歌ったりします。
さらに少しの間そこに座って尿意を促している間には1から10までを一緒に数えて言葉遊びや歌遊びをしながら楽しく待てるように配慮します。
そこで排泄できた子に対しては「すごいねー!チー出たね!」「お母さんにも出来たよーってお話ししようね」と大人も喜んでいる姿を見せ、子どものトイレに対するモチベーションを高めていくようにしています。
また流すときにもレバーは子どもに押してもらい、流れる様子をみて「バイバーイ」と手を振ってみたり、
一度トイレに成功したらシールを1枚ノートに貼るようにしたりと子どものトイレや排泄という行為への興味を楽しいものという認識や遊び感覚で続ける方向へと
持っていくことがトイレトレーニングを互いに楽しく続けていくコツです。
長いスパンでトイレトレーニングを続けていくと、どうしても子どもがおもらしをしてしまったり、イヤイヤ期でトイレに行くことに対して反抗し始めたりする時期も到来します。
そこでは決して叱ったりせずに、おもらしするのは悪いことではないことを説明して、
最後に「今度は少し早めにトイレに行ってみようね。先生も誘うから行きたくなったら教えてね」と優しく伝えるようにしています。
中にはなかなか上手くできない子もいます
同じようにトイレトレーニングをしていてもなかなかトイレでの排泄が成功できない子も中にはいます。
おむつには出るけれどトイレに座ると緊張してしまう、トイレでの姿勢に慣れずリラックスできていないという点が要因であると考えられます。
もしかしたら保育園でトイレに行くタイミングと自分の排泄のタイミングがそもそも合っていないということもあるでしょう。
そういう要因を少しでも排除し、子ども一人ひとりのトイレトレーニングを進めるために保育士は子どもごとにトイレトレーニング表を作っています。
表には何時にトイレに行ったか、成功したもしくはおむつに出ていたか、おもらしの記録などが毎日つけられています。
この記録を毎日つけていると、その子のトイレの感覚やおしっこが出やすい時間帯が分かるようになります。
つまりその子ならではのタイミングを把握してトイレに誘うことができるようになるので、より細かい配慮をした上での効率のよいトイレトレーニングが可能になります。
どうせトレーニングするのであれば失敗経験よりも成功体験を増やして前向きに進めていった方が子どもも辛くないですよね。
子ども一人ひとりにペースやタイミングが必ずあるので、トイレトレーニングに関してはデリケートな部分でもあるため特に個々の様子をよく見て保育士同士で連携しながら日々工夫を重ねて進めています。
声かけやタイミングの取り方など、家庭でも参考になるところがあるかと思いますのでぜひ取り入れてもらえたら嬉しいです。
家庭では何をすればいいの?
トイレトレーニングという名前だけ聞くと、「何だか難しそう…」「家でもしっかりやった方がいいの?」と思ってしまいますよね。
実際は何一つ難しいことはありませんし、進め方とコツさえ掴んでしまえば子どもと一緒に楽しく進めることができるのです。
保育園と家庭とのトイレトレーニングでの一番の違いは子ども用のトイレの有無だといえます。
家庭用トイレはもちろん大人向けですし、入室から着座、洗浄の操作までも大人の補助と見守りが必要不可欠なので、そこは手間かと思います。
便座に座りやすくするためのキッズ向けの踏み台や便座につける子ども用便座や手すりも市販されていますので活用してみるのもオススメです。
お子さんの好きなキャラクターやデザインのものを取り入れれば、それだけでお子さんがトイレに行くのを楽しみにするかもしれません。
補助グッズを一切用意しなくても、保護者の方が抱っこで便座に乗せてあげて支えてあげさえすれば、一般のトイレでももちろんトレーニングは可能です。
兄弟のいる方であればお兄さんやお姉さんがトイレで用を足しているところを見せてあげたり、
保護者の方が用を足すときに一緒にトイレへ入ったりすることもお子さんがトイレに興味をもつきっかけになりますので抵抗がなければぜひチャレンジしてみてください。
そうしてお子さんが尿意を伝えたり、トイレでの排泄に成功できたりした場合には、とにかく喜んで大げさなくらいに褒めてあげてください。
お父さんやお母さんが自分のことを見てこんなに褒めてくれた、喜んでくれたという経験はお子さんの心に何より残ります。
そしてまた喜んでもらいたいという思いから同じ姿を何度も繰り返し見せようと子どもなりに努力します。
しかしあくまでも子どもですので、その努力があっても時には失敗しておもらしすることも、トイレに行きたくない気分になることだってあります。
一度成功したからといってそこから毎回成功するほどトイレトレーニングは順調には進みませんが、そこはどの子もどの家庭も同じです。
自分の子だけ…と焦らずにおもらしにもイヤイヤにも気長に付き合い、常に力まず「今日は成功したらいいね」くらいの気持ちで進めていくことが望ましいです。
余裕がない時はオムツに頼る
家庭でも保護者の方は仕事に家事に育児にととにかく忙しく、時には気持ちにゆとりがなくてイライラしてしまうことだってあると思います。
おもらしや子どものイヤイヤに付き合いきれないときだって正直ありますよね。そこで叱ってしまったり、トイレトレーニングを止めてしまったりしては元も子もありません。
親子共にストレスになるくらいなら、場面に応じておむつに頼ることがあっても良いと思います。
生活の中で、じっくり子どもと向き合って付き合う時間があるときはトレーニングパンツやパンツに挑戦してこまめにトイレに誘ってみる、
余裕のないときや外出時など手がかけられないときはおむつにするというようにメリハリをつけて進めていくことも長く続けていく上では大切ですし、子どもも気持ちを切り替えやすくなります。
トイレトレーニングは子供のやる気と大人の根気が大切!
トイレトレーニングを成功させ、パンツデビューを目指すには何より子どもがその気にならなければいけません。
子どもの意思を尊重するのはもちろん大切ですが、大人側もただ見守っているだけではなかなか進まずもどかしい思いもありますので、
子どもにやる気を出してもらうための工夫や誘いかけを状況に応じてしていく必要があります。
日々違った姿を見せる子どもに対して一喜一憂してストレスを溜めてしまっていては長いトイレトレーニングという道のりで心身ともに疲弊してしまいますので、
はじめからある程度の時間が必要なものと割り切って考えて、子どもと一丸となって楽しみながら根気強く進めていくと良いでしょう。
保育士と連携しながらじっくり付き合ってみて
トイレトレーニングは保育園と家庭、どちらか一方だけが頑張っていてもなかなかうまくいかないものです。
生活習慣の一部なので、家庭と保育園とで対応や考え方が違っては子どもも混乱してしまいますよね。
もし家庭での進め方に悩んだり、保育園での子どもの様子が知りたかったりしたら気軽に担任保育士に相談してみるのもオススメです。
いつかは必ずゴールが見えます。1人で抱え込まず、大人も一緒に頑張っている、何かあったら相談できる相手がいると肩の荷を降ろして気長に付き合ってみてください。