保育園での避難訓練のねらいとは?指導案や計画書について
保育園では定期的に避難訓練が実施されます。
「訓練とはいえ子どもたちの反応が読めないからうまくできるか心配」
「どんな災害を想定すればいいの?」と慣れないうちは分からないことも多いですよね。
そこで今回は保育園における避難訓練のねらいや内容、用意するべき指導案や計画書の中身について
保育士としての経験談も交えながら紹介していきたいと思います。
避難訓練はいつ実施されるの?
保育園の避難訓練は原則として月に1回、必ず毎月行われて1年間で12回は実施することになっています。
実施される日時は保育園の方針や年間予定により様々ですが、私が勤務していた園では
「毎月第2火曜日の午前中に実施」や「月末の金曜日の15時から実施」というように職員や
保護者の方が覚えやすいように曜日を固定して行なっているところがほとんどでした。
もちろん訓練の実施内容や他の年間行事との兼ね合いもあるので月によって多少の変動がある保育園もあります。
月に1回のペースで避難訓練をすると聞くとかなり多いような印象をもつ方もいるかもしれませんが、
保育園で定期的な避難訓練の実施と訓練内容はきちんと規則で定められているのです。
私が勤務していた保育園では、どこも毎月の避難訓練の時の実施担当をクラス担任ごとや保育士ごとに振り分け、
園内にいる職員全員が平等に避難訓練を率先して実施できる機会を設けるようにしていました。
また在園児が訓練の日に全員揃っているということもほとんどありません。
病欠であったり、家庭の都合で元々休みの日であったりすることも多いです。
このような点からも毎月定期的に避難訓練をすることは子どもにも平等に訓練を経験する機会をもたらすという
意味でも月1ペースで実施は妥当であると言えると思います。
避難訓練のねらいとは
保育園での避難訓練を実施するねらいとしては主に以下の4点があげられます。
・実際に災害が発生した時の動きや対応を日頃から認識しておくため
自然災害や事故はいつ起こるかなんて予測することは不可能です。
本当の災害時は常に不測の事態が起こり、予想外の出来事が発生し続ける中で保育士たちは子どもを守りながらも
冷静かつ適切な判断をして避難や指示出しをすることが求められます。
避難訓練を様々なパターンで繰り返し経験しておくことで、常日頃から防災意識や子どもの誘導の手順を把握して職員同士の連携はもちろん、
子どもの動きなどもある程度予測しておくことができ、不測の事態に衝撃を受けつつも冷静に動くことができるようになります。
このような点で避難訓練は子どもだけでなく職員のためにも必要な訓練であるといえます。
・子どもたち自身も訓練に慣れてもらうため
保育園には0歳から6歳までの幅広い年齢の子どもたちが多数在籍しています。
規模の大きな保育園であれば子どもの人数だけで100人を超えるところもあるでしょう。
災害が起き、緊急事態を知らせるサイレンや保育士たちのただならぬ雰囲気を察知すると子どもは不安になって泣き出したり、
パニックを起こしやすくいつも以上に大人の声が届かずにスムーズに動けない状況に陥りがちです。
だからこそ避難訓練を定期的に実施して子どもにも様々な経験をしてもらうことで、
本当に災害が発生した時に大きい子は子どもなりに危険度を認識し、備えられるようになることを見込んでいますし、
小さい子は混乱の中でも保育士の声をしっかりと聞いてそばを離れないようになることを身に付けることをねらいとしています。
・避難ルートや避難にかかる時間を最新の状態で正確に把握するため
発生した災害が何であるのか、そしてその日の子どもの人数や体調によっても同じ訓練でも避難完了までにかかる時間や避難経路は変わってきます。
また保育園を出て、戸外に避難する場合には近隣の建物や道路の状況、避難場所として指定されている
公園や公共施設などの情報も最新のものでなければ避難がうまくいかない可能性もありますよね。
毎月避難訓練をすることで避難経路や子どもを連れての避難時間を常にアップデートすることができ、
非常時に備えて最もスムーズに移動及び避難ができるようになるのです。
・園児や保護者が消防や警察の方と関わる機会を設けるため
避難訓練の実施内容によっては実際に保育園に消防署や警察の方々が来て、
子どもたちに防災に関するお話や災害が起きた時の動き方など分かりやすく説明してくれることがあります。
私が勤務していた保育園では保護者に向けてもケガの応急処置の方法や子どもへの対処法などを説明してくれる機会を同時に設けていました。
このように子どもも大人も防災を身近に感じ、保育士以外の専門職の方から実践的な話を聞くことで
いざという時の対応力や判断力が高まるようになります。
保育園の避難訓練や防災の講演に参加してくれることは地域の警察署や消防署も快く承諾してくれるため、
地域で連携して災害に備えていくという意識も強くなります。
避難訓練の種類
避難訓練には災害の種類や保育園を取り巻く環境によって様々な種類や避難パターンがあります。
実際に園では訓練のたびにテーマや災害内容を決めて実施しているところが多いです。
ここでは保育園での実施されやすい避難訓練の種類を5つ紹介していきます。
・地震
地震の場合には大きな揺れを感知したらすぐに子どもを部屋の中心に集めます。
そして落下物に備えて頭を押さえてかがむか、強度のある机の下に隠れるかして揺れが収まるまではその場に留まります。
揺れが収まり動けるようになったら防災頭巾を着用、避難靴を履いて園外にクラスごとに出て点呼をとりながら速やかに避難し、点呼します。
・火災
火災の場合には火災の発生場所を確認し、園内であれば窓を開ける、外からの火災であれば窓を閉めるという対応をしてから火や煙の届かないところへと避難します。
子どもたちは防災頭巾を着用し、口元を押さえて身を低くして避難場所まで移動し、安全が確認できたら点呼します。
・水害
近年では台風や局地的な豪雨による水害も深刻かつ甚大な被害が考えられる災害ですよね。
私自身、今まで関東圏の3つの保育園に勤務してきましたが、2年くらい前から水害を想定した避難訓練が必ず実施されるようになってきています。
「近くの川が氾濫した」「堤防が崩壊した」という場合にはやみくもに戸外に出るのは危険ですのでなるべく高いところへ避難します。
事前にハザードマップを作成し、避難先に指定できそうな高台や建物の屋上などの情報を共有し、そこまでのルートもしっかりと確認した上で移動します。
安全が確認できたら点呼し、水害について説明をします。
・不審者
水害と同様、不審者に対する訓練も年々重要度が高まってきている印象です。
突然見知らぬ人が園内に押し入ってきて暴れだしたり、子どもを誘拐しようとしてきたり…無いことを祈りますが、
現実には悲しい事件が起きている状況があると万が一を想定しておかなければなりません。
訓練では不審者役を立てて実践的な対応をしたり、合言葉を決めて不審者に悟られずに園内にいる保育士に危険を知らせたりする内容を組んで実施します。
不審者訓練に関する記事
・保育園、不審者訓練のねらいは?実際に行っていることや対策について
・引き取り訓練
引き取り訓練は基本的に9月ごろ防災の日に合わせて保護者の方にも協力をお願いした上で実施されます。
園庭や近隣の公園に避難をし、点呼をしてから保護者の方が迎えに来るのを待って全ての家庭の引き取りが完了したら終了です。
このように細分化されている訓練テーマですが、保育園によっては訓練をより複雑化し実践的な対応ができるようにするために
地震と火事を組み合わせた内容にしたり、不審者と保護者の引き取り訓練を組み合わせた内容にしたりと工夫しているところもあります。
指導案や計画書の書き方について
保育園では避難訓練の実施担当保育士があらかじめ各回で決められており、
実施日が近くなると担当保育士は避難訓練の流れや避難場所、避難方法などをまとめた避難訓練計画書というものを作成します。
指導案の中に組み込んで記載するところもあるようですが、私の勤務先では避難訓練専用の計画書があり、
そこに詳細を記載して職員間で共有できるように掲示していました。
ここでは計画書に書くべき項目と書き方について紹介します。
・実施日時
本当に災害が発生する場合には日時は決まっていませんし、予測もできませんが、
あくまでも訓練ですので予定とする日時を決めておくことで各クラスの担任保育士たちも
避難訓練に合わせて子どもの活動時間を調整したり、食事のタイミングをずらしたりすることができます。
保育園の方針として年間予定で実施日時が決められているところもあれば、
職員会議などで毎月意見を出し合った上で実施日時が決まるところもありますので計画書を作成する段階で
よく分からなければ先輩保育士や園長に事前に確認しておくと良いでしょう。
・災害発生場所と原因
この項目はどのような災害を想定して今回の訓練が行われるのかを示すために非常に重要な内容ですので必ず記載するようにしましょう。
例えば火災であれば「給食室から発火」「地震により近隣の飲食店から発火」というような形となり、
不審者であれば「玄関から保育園関係者ではない男性が急に立ち入る」
「身分を明かさず突然見学したいと言って園内に入り子どもたちと接触しようとする」というような形で良いでしょう。
簡潔でも状況が分かるように記載することをオススメします。
・避難方法、避難場所
発生した災害に見合った避難方法や避難場所を設定することがポイントです。
園内で避難する場合にも避難に適したルートをクラスごとに考えておき、最も安全かつ速やかに避難できる方法を提示することが求められます。
訓練が始まってから避難が完了し、点呼も終了して全園児と保育士の安全が確認されるまでの時間の計測も忘れないようにしましょう。
訓練担当以外の保育士はこの計画書を読んで避難経路や避難場所を認識しますので、
この項目はできるだけ分かりやすく丁寧に記載するようにしましょう。
言葉だけでの説明が難しい場合には簡単な案内図を書いても良いでしょう。
・子どもたちに向けたお話の内容
避難が完了すると、訓練担当の保育士から子どもたちにお話をする時間があります。
まずは導入として今日の避難訓練はどんな災害を想定して行われたものであるのか、
避難するときに防災頭巾や靴をきちんと履いて逃げられていたか、保育士の話をきちんと聞いていられたかなどを
子どもたちにも質問を投げかけながらやりとりをします。
そのあと紙芝居や絵本を使用して火事や地震について学び、
避難訓練の合言葉でもある「お・は(か)・し・も」つまり「押さない・走らない(かけない)・喋らない・戻らない」
を子どもたちと一緒に確認するような流れが基本といえます。
・反省
避難訓練当日は担当保育士がリーダーであり訓練の責任者でもあります。
ですので実施後には自分の設定した内容で進められた避難訓練を振り返り、
指示だしや避難経路の設定に無理はなかったか、想定した避難時間は適切であったか、
災害に合った話が子どもたちの前で出来たかどうかなどを総合的に見て反省や改善点があれば具体的に記録しておきます。
反省や不備は担当保育士を責めるためのものではなく、
今後の訓練や次に訓練を担当する保育士のために活きるものですのでマイナスにとらえずに
率直な意見を記録として残しておくと今後に役立ちます。
避難訓練は不測の事態に冷静に対応する力を身に付ける
保育園で定期的に避難訓練を実施するねらいは起こり得る様々な災害に対しての対応力を身に付け、
スムーズな避難準備や安全確保を実践できるようにするということが挙げられます。
「また今月もあるのか…」と何年も保育士をやっているとマンネリを感じてしまうこともあるかもしれませんが、災害はいつ来るのか分かりません。
子どものためにも保育士として的確な判断と援助ができるようにしっかりと計画を立てて真剣に取り組むよう心がけてみてくださいね。